社台系厩舎を検索したら、社台直系厩舎はないらしい

  • 社台王国の競馬界支配の野望、非・社台系の残酷現実(厩舎)

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 預けられた馬を調教し、レースへと送り出す厩舎。競馬界最大の生産者である社台との関係が、厩舎経営を大きく左右する現実がある。社台に見捨てられ、廃業を余儀なくされるケースが続出しているのである。そして、騎手もまたしかり─。
 社台グループが権力を発揮している最大の要因、それは、種牡馬ビジネスの成功などにより、強い馬を数多く輩出しているからだ。そして社台の馬が好成績をあげられる理由の一つに、トレセン近郊に休養・育成・調教を目的に立派な育成場を持っていることがあげられる。
 美浦トレセンの近くには、山元トレセン宮城県山元町)、ノーザンファーム天栄(福島県天栄村)があり、栗東トレセンの近くには、ノーザンファームしがらき(滋賀県信楽町)、グリーンウッド・トレーニング(滋賀県甲南町)がある。
 これらの育成場は、厩舎の限られた馬房(最大、1厩舎28馬房)の有効利用、つまり馬の入れ替えをスムーズに行えるように設けられているが、メリットはそれだけではない。
 施設自体が美浦栗東トレセン以上に充実したものとなっており、ここの坂路などで鍛えておけば、両トレセンに戻ってすぐに競馬に使えるのだ。もちろん、休養馬のリフレッシュ効果も抜群。さらに、預託料が美浦栗東トレセンよりも格段に安く、馬主に喜ばれていることもある。厩舎にもよるが、おおよそ3分の2ぐらいで済むという。
 だが、問題も発生した。
「11 年に後藤由之調教師が58歳の若さで調教師を辞めましたが、自分の手でタクトを振って馬を仕上げることがなくなったためです。昔は調整方法を厩舎スタッフと決めて仕上げていったが、今は育成場で『もうレースを使うだけ』の状態にして戻し、競馬を使う時だけ美浦栗東トレセンを使用する馬主が増えてきた。社台系の馬はほとんどがそう。これでは調教師として腕の見せどころも情熱もなくなってしまう。今や、調教師の大事な仕事は預託馬集めに出馬投票、という人もいるほどです」(専門紙トラックマン)
 一方で、社台系の馬の有無が経営問題につながるケースも。12年11月20日付で、嶋田功保田一隆坂本勝美の各厩舎が「勇退」した。美浦トレセン関係者が暗い表情で明かす。「実態は『廃業』ですよ。馬が集まらず、社台系の馬はほぼゼロでした。社台とのコネを作ってこなかったからです。あんなところに頭を下げたくないというプライドがありましたが、いまさら接近しようとしても『キミのところに預けてもダメだよ』と一蹴されてしまう。食い込む余地はもはやないのが現状でしたね」
 この他、美浦所属の3厩舎が大ピンチだと言われ、
「13年中にも廃業に追い込まれるのでは、と噂されています。彼らも社台にはまったく相手にされていません」(前出・美浦トレセン関係者)

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 こうした悲惨な事態を避けるため、若い調教師は「社台詣で」にいそしんでいる。さる厩舎関係者が明かす。
「新しく調教師が誕生すると、原則的に1年間は見習いとなります(形式上は厩舎所属)。この間に社台のトレセンに行き、調教技術を学ぶ実務研修を受ける。期間は3カ月ほどでしょうか。ここで強いコネクションを作るのです」
 このコネで、社台から厩舎に馬が回ってくる。厩舎関係者が続けて説明する。
「さしあたって、どうでもいいレベルの馬を預けてもらう。その馬を3着、4着ぐらいに持ってきたら、第一段階はクリア。次はワンランク上の馬を預けられます。そうやってステップアップし、そのうち馬主から『ウチにもダービーを獲れるような馬を回してくださいよ』と言われ、『じゃあ、社台に行ってみましょう』となる。こうして厩舎はどんどん栄え、社台も潤っていく。例えば武藤善則戸田博文加藤征弘堀宣行調教師なども、デビュー当時から社台派でした」
 ところが、敢然と社台抜きで頑張り抜いている調教師もいる。ディープスカイ日本ダービー、NHKマイルC制覇)やローレルゲレイロ高松宮記念スプリンターズS制覇)、ヒルノダムール天皇賞・春制覇)を管理した昆貢調教師だ。これらのGⅠ馬は、馬主も生産者も全て非社台系。それどころか、12年余りの厩舎経営の中に、社台系の馬を見つけることがほとんどできないほどだ。それでいて、コンスタントに年間20勝以上しているのだ。
 これについて、昆師はこう言っている。
「日高地方にもいい馬はいるんだから、そういう馬をコツコツと探す。社台グループの馬ばかり勝ってたら競馬はおもしろくないでしょ」
 昆師はまた、今どき珍しい、外国人騎手に頼らない調教師でもある。これまで乗せたのは5回あるが、そのうちの3回は抽選で騎乗馬が決まるワールドスーパージョッキーシリーズでのものだ。
 調教師、厩舎の経営を左右するのが社台馬なら、騎手にもその影響は多大に及んでいる。12年12月いっぱいで、渡辺薫彦芹沢純一小林慎一郎野元昭嘉、今村康成、鈴来直人騎手が引退し、調教助手に転身する。そのうち小林は音無秀孝厩舎、野元は松田博資厩舎と、いずれも社台グループの馬を数多く預かっている厩舎に所属していた。が、ここ数年は社台の馬にほとんど乗せてもらえず、成績も低迷していたのだ(今年、小林は0勝、野元は2勝。いずれも12月16日現在)。

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 これはオーナー、社台の強い「厩舎介入」に泣いた結果、と言える。いったいどういうことか。
「社台系の多くはクラブ馬ですが、着順を一つでも上げて賞金を稼ぐことが至上命令となっています。そのため、必然的に腕の立つリーディング上位の騎手を重用することになる。外国人騎手は別にすると、音無厩舎なら福永祐一川田将雅浜中俊横山典弘など。松田厩舎なら岩田康成、北村友一、川田など。一流騎手騎乗は、会員からのたっての希望でもあるそうです」(競馬ライター)
 その結果、特定の騎手に騎乗依頼が集中し、騎手間の格差がどんどん広がっていく。岩田や福永のように、特に社台に気に入られて「お抱え騎手」となり、何億円と稼ぐ騎手もいれば、ほとんど乗れずにバレット(騎手の馬具を整えるなど雑用をする補佐役)をして食いつないでいる騎手もいるほどだ。
「聞くところによると、『サンデーレーシング』の吉田俊介代表(38)は岩田や福永がことのほかお気に入りで、期待馬には彼らを乗せることが多いとか。恐らく、この2人と世代を同じにするせいもあるのでしょうね」(前出・トラックマン)
 参考までに、リーディング上位の社台系騎乗率(全体の騎乗数に占める社台系の馬に乗った比率)をあげてみる(データは11年度のもの)。50%以上=横山典/40%以上=福永、安藤勝己/30%以上=岩田、川田、蛯名正義北村宏司三浦皇成四位洋文
 騎手によって騎乗数も異なるので絶対的なものとは言えないが、彼らが社台お気に入りの騎手であることは確かだ。前出・美浦トレセン関係者が言う。
「蛯名が結婚式をあげた時の仲人は、社台ファーム代表の吉田照哉氏。だから多少の騎乗ミスをしても許されます。関東ではもちろん、社台の比較的いい馬には蛯名が乗ることが多いと思いますね」
 ちなみに、その蛯名と同期の武豊の社台系比率は、20%強。武といえば、本誌既報どおり、「社台に干されている」はずだが、これは社台から買った馬を個人で預けている、いわば社台の手を離れた馬に騎乗していることから計算された数字である。
 社台からはじかれていても、ラフィアンマイネルの馬名で知られる、社台と並ぶ大手会員制馬主クラブ)に見込まれている津村明秀丹内祐次大野拓弥といった騎手はまだいいが、それ以外の若手、中堅騎手の未来は暗いようだ。
 競馬界における、社台一強時代は、2013年も盤石の気配である。