ハーツクライよ永遠に・・・

2005年の「有馬記念」、2006年の「ドバイシーマクラシック」を制した「ハーツクライ」(牡22歳)が9日(木)、けい養先の「社台スタリオンステーション」(北海道安平町)で死去した。
2004年1月に「京都」の「新馬戦」で1番人気に応えてのデビュー勝ちを収め、重賞初挑戦の「きさらぎ賞」(G3)で3着後、「若葉S」で2勝目を飾る。牡馬クラシック初戦の「皐月賞」では5番人気ながらも14着と大敗したが、続く「京都新聞杯」(G2)で重賞初制覇を果たす。「日本ダービー」ではレコード勝ちした「キングカメハメハ」に次ぐ2着と健闘するも勝利から遠ざかっていた。
が、翌2005年の「有馬記念」では当時、短期免許で来日した「クリストフ・ルメール」騎手を鞍上にこれまでの追い込み策から一転して先行策とし、最後の直線で先に抜け出すと21年ぶりに無敗で「牡馬クラシック三冠」を達成した後に挑んだ「ディープインパクト」の猛追を半馬身差で退け、大金星でG1初制覇をもたらし、同年の「JRA賞」の「最優秀4歳以上牡馬」に選ばれた。
翌2006年は初海外遠征となった「ドバイシーマクラシック」を制してG1・2連勝を挙げた。続く「キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドS」は出走6頭中の3着に敗れた。その後、国内初戦となった「ジャパンC」では「喘鳴症」を発症した中での出走となり、出走11頭中、ブービーの10着に敗れ、現役を引退。
種牡馬入り後も種牡馬としても大きな成功を収め、日本ダービー馬ドウデュースやワンアンドオンリーのほか、国際クラシフィケイションランク1位のジャスタウェイリスグラシューシュヴァルグラン、スワーヴリチャード、Yoshida、フェイムゲームなどの主にGⅠ馬を送り出し、先月26日にはJRA史上単独8位となる勝利数(1436勝)をマーク。現2歳世代がラストクロップとなる。

ハーツクライとのコンビでGⅠを2勝したクリストフ・ルメール騎手は10日に自身のSNSを更新。2005年の有馬記念で自身にJRA重賞初制覇をもたらした相棒の死を悼み、「私のチャンピオンの訃報を聞いてとても悲しいです。日本での私は、全ては彼から始まりました。吉田照哉さん、社台ファームのスタッフの皆さん、本当にお疲れさまでした。伝説は決して消えることはありません」と思いをつづった。
ハーツクライを管理した橋口弘次郎元調教師「ドバイシーマクラシックを勝ったのが一番の思い出です。本当に強くて感動しましたし、興奮しました。有馬記念もそうですね。ディープインパクトを語るときに、必ずハーツクライが出てきますから。種馬としてもいい子をたくさん出して、ワンアンドオンリー日本ダービーも勝たせてもらいました。本当に感謝しています」
社台ファーム吉田照哉代表>
ハーツクライが昨晩、力尽きました。最期の最期まで気高く、弱みを見せずに旅立ったと社台スタリオンの担当者から聞きました。育成期は足を振るような独特な歩様ながらも、調教走路で見せるバネの違いは明らかでした。それまでも多くのサンデーサイレンス産駒を手がけてきましたが、跳ね方、敏しょう性、推進力が桁違いで、かなり自信を持って橋口弘次郎調教師にお渡ししました。
競走生活のハイライトはやはり4歳末から5歳にかけての3戦でしょうか。ディープインパクトを抑えた有馬記念。相手が相手だけに、その後、ハーツクライにダーティーなイメージがつくことを心配したのですが、次戦のドバイシーマクラシックの圧勝で、日本の競馬レベルがとてつもないところに進んでいることを証明してくれて、関係者、ファン、メディアの方を含めて皆さんが喜んでくれた。その姿を目の当たりにして私自身もこれ以上ないくらいに感激しました。普段はあまり声を出さずにレースを見るのですが、周囲は外国人関係者ばかりだったということもあり、最後の直線を迎えたところで、この時ばかりは橋口調教師とともにもっと離せ、もっと離せ!と熱く叫んだことを思い出します。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでもアスコット競馬場のゴール前で先頭に立ち、世界トップクラスと互角に戦ったシーンは、この業界にいるすべての方々を勇気づけたと思います。種牡馬入りしてからも活躍馬を多数輩出してくれました。ハーツクライ自身と同様にアウェーに乗り込んでもパフォーマンスが落ちるどころか、むしろ強さを見せつける産駒が多く、海外遠征の高い壁や不安を突破してくれるきっかけとなった馬かもしれません。種牡馬引退後は放牧地で悠々自適に過ごしてくれていました。やっと訪れたこの快適な生活をもっと長く満喫して欲しかった、いつまでも生き続けて欲しかったのですが、突然の別れとなり残念でなりません。
ドバイ国際競走を前に、このような知らせとなり何とも言えない因縁めいたものを感じております。ハーツクライ、心の叫びという馬名も威圧的な雰囲気と相まって、とてもしっくり来るものでした。勝ったレース、負けたレースも含めていろいろな景色を見せてくれました。感謝しています。どうか安らかに眠って欲しいと思います。携わってくださった全ての関係者方々、応援していただいたファンの皆さま、配合相手に選んでくださった生産者の皆さま、この場を借りて厚く御礼申し上げます。今まで大変お世話になりました。ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。