実は“下り坂”のジャパン・アニメ〜騒いでいたのは関係ない人たちだけ(日経ビジネスオンライン)http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20091014/207066/

トヨタやホンダ、ソニーなどと並び、日本人が「ニッポンが頑張っている」と感じている筆頭の1つとして
クール・ジャパン」は必ず例に出されます。
では、はたしてどれほど「成長」し、「世界で勝」っているのか。その現状を知らずして、今後の成長支援
の「方法論」を描くことはできません。
まずは、その現状を見てみましょう。
【世界に広がるアニメ・マンガ・・・】
ハリウッドに住み、日本映画の世界戦略のお手伝いをしています、とお伝えすると、100人中100人から
「ニッポンのコンテンツは“クール・ジャパン”と呼ばれているそうですからね。やっぱりハリウッドで人気
が高いのですか?」と尋ねられます。おそらく、これが一般ビジネスマンの認識でしょう。
確かにニッポン発のアニメやマンガは若いハリウッド・プロデューサーたちを中心に人気が高いことも
事実です。特に、映画化するネタに困窮し、国内のベストセラー小説や「スパイダーマン」などの古い
グラフィックノベルに頼りがちな映画業界において、ニッポンのアニメ、マンガは“隠れた金脈”と考え
熱烈なラブコールをかけてくるプロデューサーもいます。
アメリカのみならず、フランスやイタリアなどのヨーロッパや韓国、香港などのアジアにおいてもアニメ、
マンガは一部のコアなファン層がいることは、コンテンツ業界にそれほど詳しくない企業の経営幹部の
方でもなんとなく見聞きしておられると思います。
金髪の女の子が「ドラゴンボール」や「NARUTO」などのコスプレをしてファンの集会に駆けつける様子や、
マンガが英語や他の言語に訳され「日本と同じように右から読む習慣まで浸透している」と記者が
興奮してレポートしているニュース映像や記事をご覧になった方は多いでしょう。
こうした状況を背景に、日本の政府もアニメやマンガなどのポップカルチャーをニッポン発の新たな産業
にしようと“クール・ジャパン”というキーワードを掲げ、日本の成長戦略に組み込み始めています。
【マンガが世界に広がっていると誰が言った?】
「マンガ好き」と言われた前の首相は退陣前の7月に、こう発言しています。
「若者が持っているコンテンツは、アニメーション、CD、写真、コミックなどたくさんある。
(だが、コンテンツが)いくら金を稼ぎ出しているか、わかっていない人が多い。ハリウッドが映画のメッカ
なら、秋葉原をコンテンツのメッカにすればいい」(産経ニュース 2009年7月25日)
ほお。それでは、日本のコンテンツが「いくら金を稼ぎ出しているか」、ちょっと調べてみましょう。
(本文より一部抜粋)

まずは麻生氏が1週間に20冊以上も読んでいたというマンガ。日本では最近規模が減少してきたとも
言われますが、それでも約2兆円の出版業界で5000億円程度の市場を誇っています。
海外ではどうでしょうか。海外の中でも最大エンタテインメント国アメリカ、そしてマンガブームでよく
報道されるフランスをみると・・・。
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えっ? と読者の皆さんは驚いたでしょう。数字が間違っている? と思われたかもしれません。
日本の5000億円に対し、米国はすでにピーク200億円から下り坂。フランスは2007年までの時点で
成長が続いていますが、それでもたった60億円弱。これが世界に誇るニッポンの産業の姿でしょうか?
ご参考までに出版市場は、日本の約2兆円に対し北米が約20兆円と言われています。つまり、本来は
北米は日本の10倍の潜在規模がある。
なのに、マンガにおいては北米は日本の25分の1で既に縮小傾向・・・となります
【アニメが「クール」と誰が言った?】
「いや、マンガは読みにくい、文化として浸透していないのだ。やっぱりクール・ジャパンを最もわかり
やすく伝えるのは映像、つまりアニメだ」という皆さんもいるでしょう。
日本のアニメ産業はDVDなどパッケージが1500億円弱、そのほか関連市場も合わせて全体で3000億
円弱と言われます。それに対して海外は・・・。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20091014/207066/graph002.jpg
げっ! と思わずパソコンの画面の前で悲鳴をあげてしまった方も多いと思います。
そうなのです。確かにアメリカではマンガより少しだけ大きく、コンスタントな規模を保っています。
しかし、それでもここ最近は減少傾向。フランスに至っては、なんとマンガよりも小さいのです。
たった30億円・・・。
そう、私たちは大きな勘違いをしていました。
「クール」ジャパンは、世界ではまったくお寒い状況を続けているのです。