東日本大震災 電力供給綱渡り/計画停電回避へ万策尽くせ(河北新報)http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2011/08/20110810s01.htm

 東日本大震災の影響で電力供給力は落ち込んだものの、電力使用制限令の発動で節電への取り組みが進んだ。この夏は余裕を持って乗り切れるはずだったのに、状況は一変した。
 東北電力電力需給が逼迫(ひっぱく)している。先月末の新潟・福島豪雨で、多くの水力発電所が被災したのが直接の原因だ。
 東京電力から融通を受けてしのいでいるが、綱渡りの状態が続く。もし計画停電が実施されることになれば、被災地の復旧・復興への打撃は大きい。回避に向け、あらゆる手だてを講じてもらいたい。
 豪雨では福島、新潟両県の合わせて29カ所の水力発電所が被害を受け、28カ所が今も停止している。復旧のめどは立っていない。電力供給力は、約100万キロワット低下した。
 東北電は当初、8月の最大電力需要を1300万キロワットと想定し、需給に問題は生じないと見ていたが、目算が狂った。自社で確保できる供給力は1166万キロワットまで落ち込んでいる。
 8日は管内の気温上昇で最大需要が想定を上回ったため、東電に2度にわたって追加融通を要請。当初計画していた30万キロワットは110万キロワットまで膨らんだ。
 供給余力(予備率)は午前中に今夏最低の2.8%まで低下した。予備率が前日か当日朝の見通しで3%を割り込むと、政府が電力需給逼迫警報を出す。まさに緊急事態だった。
 きのうは、東電から過去最大で、現行の融通枠の上限に当たる140万キロワットの供給を受けた。猛暑によりエアコンの使用量拡大が見込まれたためだ。
 両社は融通枠の拡大で合意、最大60万キロワットを積み増す方向で調整している。共同出資会社である常磐共同火力の勿来発電所いわき市)の送電線をつなぎ替え、追加融通が可能となった。
 とはいえ、まだ安心はできない。管内では最高気温が1度上がると、電力需要は30万〜35万キロワット程度増えるとされる。
 東北電は家庭や企業に節電への一層の協力を呼び掛けているが、すでに取り組みは大きく進み、大幅な削減は難しい。
 エアコンの使用を控え、扇風機などで暑さをしのいでいる人が多い。気をつけなくてはならないのは決して無理をしないことだ。熱中症にかかってしまったら元も子もない。
 企業などがピーク時の使用電力を減らす努力はさらに必要だろう。だが、被災地では限界もある。復興への歩みに悪影響が出るようでは困る。
 東北は歴史的に、電力供給地として重要な役割を果たしてきた。非常時の今ぐらい、他の地域に支えてもらってもよいはずだ。節電にさらに努力し、その分を東北に回してほしい。
 東北電は先月、計画停電を実施する場合の新たな枠組みを発表した。福島県は除外したものの、それまで対象外だった宮城、岩手両県については内陸部に限り、対象に加えた。
 ただ、あくまで万一の備えであり、「計画停電は原則実施しない」方針は変えていない。猛暑が続いても原則が揺るがぬよう、万策を尽くしてほしい。

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