BAR LOGウイスキーの知識5「酒税法が生んだスコッチ・ウイスキー」http://blog.livedoor.jp/davidbatt/archives/50854834.html

17世紀後半、その人気に目をつけたスコットランド議会は原始ウイスキーに対して課税することを決定します。
それでも蒸留家たちはしばらくの間、仕方なく税金を支払ってウイスキーの製造を行っていたようですが、課税は徐々にキツいものとなり、1707年にスコットランド議会がイングランド議会に吸収され消滅後の1713年には麦芽の使用量に対して課す麦芽税が導入されました。
これにより、一部では廃業、ごく一部だけがその酒税法に従い高い税金を支払いながらも製造を続け、残りの蒸留家たちは目立たない山の中に隠れてひっそりと密造する道を選びました。
ここからが、100年以上に渡る密造酒の時代の始まりです。

山の中にひっそりと蒸留所を構えた密造者たちは、まず、大麦麦芽を乾燥させるために、周りにあった、ヒースという植物の炭を多く含む泥炭を使うようになります。
苦肉の策だったのですが、これによりスコッチ・ウイスキーの特徴づけるスモーキー・フレーバーが誕生したのです。

また、山の中に入ったことで、きれいなおいしい水を使うことができるようになったのも大きなメリットでした。
特に、スペイ川は高低差が約300mあり、ヨーロッパ第一の急流と言われています。
そのため、交通手段が不便で、ひっそりと隠れるには最適な上、同時に美しい清流も手に入れることができ、多くの密造者たちはこぞってスペイ川流域に蒸留所を作りました。

さらに、いつやってくるかも知れない徴税官の目をごまかすため、不要になったシェリー酒の空樽に隠して買い手が現れるまで貯蔵しました。
これにより、偶然、琥珀色に変身したまろやかで香り高いウイスキーが生まれたのです。

言わば、酒税法に追いつめられたことが、美味しい水、ピート香、樽熟成を生み、現在のまろやかで香り高いモルトウイスキーを生んだのです。

話は戻って、この酒税法はもう一つのウイスキーも生んでいます。

密造の道を選ばず、真っ当に税金を支払いながら製造を続けていた蒸留家が、麦芽の使用量に対して課された麦芽税から逃れるために、発芽していない大麦や小麦、ライ麦、トウモロコシなどを原料とするグレーン・ウイスキーを開発したのです。
そして、モルトウイスキーにこのグレーン・ウイスキーブレンドすることで、製品としての税率を下げることもできたというわけなんです。

同時にグレーン・ウイスキーは、後にできた連続式蒸留器を使用して効率よく蒸留できるため、モルトウイスキーに比べれば比較的手間がかかりません。
これをブレンドをすることでウイスキーの大量生産が可能になり、風味も多様化したのです。